全司法労組、少年法改正で意見書

(2000年10月)

全司法労働組合

全司法労働組合(奥田正委員長)は2000年10月11日、自民、公明、保守の与党3党が議員立法で提出し、現在衆院法務委員会で審議中の少年法改正案に対する意見書を発表した。全司法労組は、裁判官以外の裁判所職員1万人余りで組織している。

裁判所庁舎内で飲み会自粛を 宇都宮地裁・家裁、組合に申し入れ=栃木

(2002年7月)

宇都宮支部

裁判所の庁舎内

宇都宮地裁と家裁は、裁判所の管理職を除く職員が加入する「全司法労働組合宇都宮支部」に、庁舎内での飲み会の自粛を申し入れた。パソコン導入などOA化でじゅうたん敷きになり、「汚れると困る」(地裁総務課)というのが表向きの理由。「役所内で酒を飲むのはいかがなものか」という声に、配慮した側面もあるようだ。

地裁では、足利、栃木、真岡、大田原にある地裁各支部にも協力を求めている。

職員の歓迎会や打ち上げ

地裁総務課によると、地裁では以前から、部や係単位などで、職員の歓迎会や打ち上げなどを、勤務時間外に庁舎内で開くことが、なかば慣例になっていた。組合側も、趣旨には賛同しているという。

庁舎内でのビアパーティー

だが、職員からは「恒例の庁舎内でのビアパーティーがなくなりさびしい」といった、本音も漏れている。

少年法改正に高松家裁の調査官ら反対/香川(宮畑晋吾)

(2000年5月)

国会での改正議論

独自案を与野党へ

少年法の改正で、高松家裁の調査官らが、政府の改正案に反対する独自の提案をまとめ、与野党各党などに郵送した。少年審判への検察官の出席などに反対し、少年の厳罰化でなく、審判の事実認定機能を強化することを目指す提言。現場で少年に接する立場から、国会での改正議論に声を上げた。(宮畑晋吾)

全司法労働組合香川支部
丸亀支部

高松家裁や同家裁丸亀支部の調査官ら、全司法労働組合香川支部に所属する4人がまとめた。4人は1998年から県内の元家裁裁判官や大学教授、弁護士ら有志と市民団体「子どもを守る会」を結成。県内の少年問題にかかわる施設で働く人たちに呼びかけ、「少年法について考える会」を高松市内で開くなど、意見を交換してきた。

刑事訴訟法
検察官の抗告権

提案書は、政府案が審判への検察官の立ち会いや検察官の抗告権を認めていることに対し、「検察官はほとんどの事件で審判への出席が可能になり、少年の処遇決定に影響を及ぼす」と反対。そのうえで、家裁の事実認定機能を補うため、事実認定に争いがある場合にだけ、家裁が弁護士をつけて少年を地検に送り、地裁で刑事訴訟法に基づいて事実を認定するという「ブーメラン方式」を提案している。

また第二案として、家裁に「事実認定部」を設けて検察官と弁護士の協力を得て審理する案も示している。

4人は2000年7月にも高松市内で「少年法について考える会」を開き、少年法改正への最終的な意見をまとめるという。

速記官足りない 裁判所、大量退職期補充に追いつかず【大阪】

(1994年10月)

大阪高裁管

法廷で裁判の当事者や証人たちの証言を記録し、公正な裁判を支える速記官が、深刻な人手不足に直面している。大幅な定員割れの状態が続き、3年後からは全国規模で大量退職も始まる。社会構造の変化を反映して、裁判が複雑で専門的になる中、大阪高裁管内では、民事裁判で民間の速記者を導入するケースも多くみられる。

裁判所速記官

「沈黙の人(サイレントマン)」。速記制度の先進国、米国で裁判所速記官はこう呼ばれている。

激しい言葉が交錯し、時には緊迫したドラマが展開する法廷で、黙々と「ことば」を拾い続ける。21のキーを組み合わせて記号を打ち出す「ソクタイプ」で速記し、それを反訳して速記録をつくる。

民事裁判
立ち会いの10倍の時間

法廷での立ち会いは1時間交代だが、反訳には立ち会いの10倍の時間がかかるという。経済事件や公害、薬害などの民事裁判でも高度で専門的な分野の証言が増えたが、そうした専門用語の調査や確認も速記官に任されている。校閲や編集も1人の速記官が手掛ける。

速記官制度

裁判所の速記官制度は、1957年の裁判所法改正で正式に発足し、速記官は書記官とともに「車の両輪」と位置付けられた。当時、最高裁は速記官の総人員を1000人程度と考えていた。

全国で828人

ところが、予算定員は1964年の935人で据え置かれたまま。採用枠も減らされ、現在、速記官は全国で828人と、予算定員を大幅に割り込んでいる。

速記官不足
「外部速記」導入

とりわけ、大阪高裁管内の速記官不足は深刻で、民間の速記者を依頼する「外部速記」が導入されている。全司法労働組合近畿地区連合会がまとめた「速記官白書」によると、外部速記は1993年度に同高裁管内で計504時間(うち大阪地裁は369時間)を占めた。費用は裁判を受ける当事者の負担で、1993年度は同高裁管内で総額約1600万円にのぼった。

無罪主張の事件

大阪地裁の場合、速記官は堺支部を合わせ計93人。外部速記は民事裁判に限られ、刑事裁判は被告の権利を守るため、裁判所の速記官が立ち会う。被告が起訴事実を否認する無罪主張の事件では、尋問は原則として速記録を取る。

速記官白書

しかし、「速記官白書」によると、1989年から4年間に全国であった刑事裁判(一審)の否認率7.30%に比べ、大阪高裁管内の刑事裁判で速記官が付いた比率(付速記率)は4.81%で、否認率を大きく下回った。速記官の配属されていない支部や簡裁で、速記官の立ち会わない事件があるためだという。

速記官の大量退職

こうした状況の中で、速記官の大量退職が1997年から始まる。制度の正式発足後、70-90人台の採用が続き、この時期の採用者が定年を迎えるからだ。「速記官白書」によると、1997年から6年間で計215人が退職する。

2年間の実務研修

速記官は採用後、2年間の実務研修を受けてから裁判所に配属される。実務研修は厳しく、実際に卒業できるのは採用数を下回る20人台で推移しており、大量退職の補充は難しいのが現状だ。

最高裁事務総局
実地視察

最高裁事務総局は1993年春から、総務局に速記官を初めて配属し、大量退職に備えた検討作業に入った。1994年春には米国に速記官を派遣、速記制度の先進国を実地視察した。

問題点の調査、検討

最高裁事務総局は「大量退職はかつて書記官でも起きた問題で、その時は裁判所全体で知恵を出して乗り切った。今回も裁判所を利用する国民に迷惑をかけてはならないという観点から、速記に関するさまざまな問題点の調査、検討をしている」と話している。

「公正」実現に不可欠の存在

弁護士でもある井戸田侃・大阪国際大教授(刑事法)の話 速記官は公正な裁判を実現するために不可欠な存在だ。外部の速記者は公務員としての責任がないため、内容の信用性に問題が出てくる可能性があるし、当事者に費用の負担もかかる。速記録がないと、上訴したときに正確な記録が残らず、刑事裁判の場合、被告が不利な立場に陥ることも考えられる。国は必要な数の速記官を配置する義務があると思う。

裁判所速記官の退職者数 (「速記官白書」から)
退職年度退職予定者
199411人
199516人
199612人
199743人
199827人
199940人
200037人
200138人
200230人
200314人